戦術の順番
技術と言う字は「技」と「術」に分けられます。
技はテクニックですよね。
では術は??
術=戦術(タクティクス)だと思います。
基礎テクニックの練習の時に、戦術的要素を入れておくことが、年齢が上がった時に違いが必ず出てきます。
「ただ打ってるだけ」「ただ粘ってるだけ」に見えるかどうか?って戦術面が左右するのではないでしょうか?
そして配球と戦術は違うと思います。
「あっち打って、次はこっち打って」と言った配球ではなく、状況判断をベースに対応策を出していくのが戦術であり、ゲームベースドアプローチだと思っています。
例えばどんなに良い配球しても、その配球に対して、
①相手の返球を予測して
②ポジションをしっかり取れる
事が出来なければ、レベルが上がって切り返されたら逆にピンチになってしまいます。
低年齢であれば、そんな事考えなくても先にやったもん勝ちになるのかもしれませんが、少し上に行くとほぼ通用しなくなります。
その為普段の球出し練習から、どこからスタートしてどこに戻るのか?を習慣付けをした方が良いと思います。
そして身に付ける戦術としてよく言われる順番があります。
指導する側としてはその選手にどのレベルまで求めるのか?が非常に見極めが重要だと思います。
試合で悔しい負けを経験して、初めて真剣に取り組む選手が多いと思います。
その為試合を指導者が実際に見て、試合直後のミーティングで次の課題を話しておくのは、今後の選手の戦術理解を深める為にも必要だと思います。
勿論年齢やレベルが上がれば、自分での判断をしなければならないので、ある程度は任せます。
しかしどの方向に向いているのか?と言う方向性だけは必ず話し合って納得しあう時間は必要だと思います。
戦術の最初の段階であるコートの中に入れる事一つ取ってみても、どのクオリティのボールで入れるのか?を考えて取り組むだけでも、練習の負荷は凄く変わると思います。
そうした取り組み方を、ホームコートで選手とも戦いながら、今年もしっかり継続していきたいと思います。
2020年明けましておめでとうございます!
旧年中には大変お世話になりました。
今年も更なる飛躍目指す選手を全力でサポート頑張りますので、引き続きどうぞ宜しくお願い致します。
年末の小浦塾にて、またまた素晴らしい刺激をいただきました。
今年はテニス以上の事を教わったキャンプでした。
「何度体験しても、いつも新しい学びがある」と言うのは凄い事だと思います。
良く、「小浦先生信者なんでしょ?」とか「外交辞令なんでしょ?」とか言われる事もあるんですが、本当にそんな事は無いんです。
一度自分で体験しないと分からない事っていうのはたくさんあると思うんですが、そのうちの一つだと思っています。
今年も学んだ事を活かして、選手達と共に戦っていきたいと思います。
様々な方々からのサポートを本当に有り難く思っております。
本年も宜しくお願い致します!
最近良く見る意見について
以前のブログにも書きましたが、伊達公子選手の論文が出て以来、「日本にもハードコートを!」と言う意見が目につきます。
世界基準はハードコートであり、日本は砂入り人工芝がメインだから、と言うご意見です。
伊達公子選手の論文について思う事。 - Earnest Tennis Academyのブログ
もちろんそれは真実の一つではあると思います。
しかし個人的には、世界基準ではハードコートとクレーコートだと思います。
そしてその2つのコートでは、戦略などは大きく変わるのではないでしょうか?
例えば早いテンポの試合が得意な選手は、ラリーが続いてイレギュラーもあり、跳ね上がるクレーコートが弱い。
ストローク主体で回転量が多く、ポジションが下がる選手はハードコートでは結果が出にくい。
最近は変わってきたようですが、以前からよく言われている話です。
個人的にはどちらが先か?と言う違いで、
①体格的に日本人はクレーで守りをしっかり鍛えて、そこから攻撃力を上げる選手もいれば、②ハードでコンパクトでテンポ早くて、ネットプレイも含める選手が、クレーで粘り強さやそのラリーの多さからの戦術を覚えていく、と言った方法もあると思います。
いずれにせよ感じるのは、ハードコートにしたら自動的に世界基準の選手が出て来るわけではないと言う事です。
それを言えば普段からハードコートで練習しているクラブからは、どんどん世界基準の選手が出てきておかしくない。
でも実際はなかなかそれは難しい。
逆に言えばハードコートがないクラブからは、世界基準の選手は出てこない、と言う話になります。
それはどうしてでしょうか?
やはりハードコートやクレーコートで勝ち抜くには、身体がしっかり使える技術が必要だろうし、コーディネーション能力も必要だろうし、厳しい試合に取り組めるメンタルも必要だろうし…
ハードではなくソフトの面での世界基準が必要なのでは?と思います。
それを伝える為のツールとしてハードコートやクレーコートがある。
それを必要性を選手が感じるために、ハードコートやクレーコートがある。
そう言った感覚が必要なのかな?と感じます。
伊達公子選手の論文にも空間認知の必要性などが書かれており、ソフト面の向上も書かれています。
個人的にはコートサーフェスよりは、3セットマッチの導入の方が必要性が高いと思うし、実現可能だと思います。
そして必ずしも世界基準を目指す選手ではなくても、今いる自分のレベルから一つ上のレベルに行きたい選手に必要なのであって、見方によっては世界目指さないから砂入り人工芝でいい的な感じにも捉えられる意見も見ます。
現場にいるコーチを職業にしている方には、そんな感覚はない、と思います。
特にジュニア選手に覚えて欲しいのは、絶対基本です。
身体の、心の、技の、絶対的な基本。
それが
どれほど難しい事か!
どれほど時間がかかる事か!
ITFを回る選手には、それに詳しいツアーコーチの方々がおられます。
僕たちホームコーチの役割は、その選手の10年後を想像して、今の年齢のその選手に何が必要か?を取り組む事が必要だと思います。
そうしたホームコーチの立場の僕にとっては、「世界基準の為にハードコートを!」と言う意見は何だか片手落ちの様な感じがしてしょうがないのです。
あくまでも個人的な意見ですので、批判的に取られて不快に思われた方がおられたら大変申し訳ありません。
インパクトのラケットについて
基本的に当たる瞬間はラケットは地面と垂直になっています。
スピンだから伏せ気味とかは、ほぼ無い感じです。もしあったとしても5°以内位では無いでしょうか??
そしてそれに加えて、ほぼ地面に水平であると話してます。
そして何よりこのラケットの状態でインパクトするには、自分の身体も極端に傾かない事が重要だと思います。
特に成長期の選手だと、身長が伸びていく過程で当たり前ですが腕の長さも伸びます。
しかし目で見た打点との距離は変わらない選手も結構います。
小学生低学年の時の距離感を、そのまま中学生に引きずっている感じになります。
そうなると、頭が傾いたり肩のラインが傾いたり、打点が詰まって反りあがったり…。
厄介なのは本人達が「それが自分の良い打点だ」と思い込んでいる事です。
斜めに頭が傾いて見ている世界を本人が真っ直ぐと思うのは、脳が補正しているからでその分動きや距離の取り方に影響があると思います。
たかがラケットのインパクトの状態ですが、それがズレてる時に「何故なのか?」を考えて取り組むと言う内容が今の練習です。
かなりシンプルに動きを指定して、そこからラリー練習に移行しています。
最初の目的は真っ直ぐ狙った方向へ打てるか?と言う事です。
クリアーに当てて、狙った方向へコントロール出来る事は、試合の中でのラリー力に凄く重要です。最終的にはロングクロスを狙って打てるか?が目的として行なっています。
自分の身体がバランスが良いのか?と言う感覚は何処で養われるのか?と言うと、僕はウォーミングアップだと思います。
ストレッチなどの時のフォームや刺激を感じる事が、身体の内声感覚を育ててくれると思います。
アップをいい加減にしている選手は、やはりそうした感覚は悪い傾向があります。
そうした傾向を見ていると、コートでラケットを打つだけではなく、普段の生活の中での動きは、本当に重要だと思います。
自分自身も今やっているのは、ただ立つ事。
ただ立っているだけですが、時間が過ぎていくと微妙に動いている事や、特定の場所が疲れたりします。
そうした感覚を感じながら色々と考えて「ただ立つ」。なかなか面白いです(笑)。
コントロールの順番について
遠征やキャンプが続いたシーズンが終わって、ようやく一息ついています。
アーネストではここから3カ月はじっくり腰を据えて技術の変更に取り組みます。
大きな試合の予選などもありますが、来シーズンに向けて「変わった!」と思わせる何かを作るために必要な期間です。
小浦塾でも学びから、アーネストの選手に必要だと思う部分を取り出して強化しています。
今回初参加のメンバーもいたので凄く印象に残ったのが、「何をコントロールしようとしているのか?」と言う事でした。
いつもの小浦塾だと技術やフィジカル中心で、マッチタフキャンプ ではメンタル面といった内容でした。
しかし今回の小浦塾は心技体両方に関した内容でした。
やまわ
そうした時に、選手がどちらを優先して考えているか?を、観察していました。
テニスをする際にコントロール出来るものは3つあって、その順番もあると考えています。
の順番です。
小浦塾に参加する選手を見ていても、やはり各クラブでの指導方針もあるのでしょうが、まずボール・コントロールにしか興味がなさそうな選手がほとんどです。
しかしテニスで使う武器は身体です。
ボディ・コントロールなしにボール・コントロールをする選手は、ラケットの力や末端の力に頼るので、ある程度のレベルからはボールコントロールが出来なくなります。
ショットクオリティも下がりますし、何より怪我が多くなります。
ボディ・コントロールをしようと思えば思う通りに身体が動かせるか?と言うのが重要になります。
ただ飛んだら跳ねたりが出来るだけではなく、使い方が優れているかどうか?です。
ボディと言いますが、どちらか言うとフィジカルではなくテクニックの部類に入ります。
そして思い通りに身体を動かすには、メンタルのコントロールは必要不可欠です。
誰だってマッチポイントなどで緊張したりすると、思うようには動けません。
だいたい緊張して負けた選手の言う事は、「足が動かなかった」「しっかり振らなかった」などです。
技術は試合中には無くなりません。普段練習で出来ているショットが出来なくなるのは、メンタル面での問題でしょう。
小浦塾での受講の時に、こうした順番で考えると納得出来る事が多くあります。
多くの選手はすぐにラリーやゲームをしたがりますが、しっかり集中して良い刺激を身体に入れて、正しい動きのドリルをこなす事に重きを置ける事が出来る選手であれば、かなり実りは多いと思います。
考えてみれば当たり前の事ですが、指導する側も正しい知識を持つ必要があります。
しかも多角的に。
なので、こうしたキャンプには必ず帯同して指導者自身が内容を共有し、ホームに帰っても継続しなければいけません。
そして次回参加する時のために、メンタル・コントロールをホームで練習しておく必要があります。
それはホームでの他の選手にも素晴らしい実りがあると思います。
一週間もの素晴らしいキャンプの内容を無駄にしないためにも、引き続き選手達のサポートを継続したいと思います。
全日本ジュニアを終えて
2019年の全日本ジュニア14歳以下男子シングルスにアーネストの糸永龍矢選手が出場しました。
九州勢では一番低いランクでの出場だったので、ドローは期待していませんでしたが、第6シードとの対戦で、1Rで負けてしまいました。
酷暑の中の試合という事で、ファイナルセットは10ポイントタイブレークと言う形式になりました。
負けた次の日は、靭に行って16・18歳以下の試合を観戦しました。少しでも何か持って帰りたいと思い、彼が何を感じるのか?を期待しながらの観戦でした。
ここからは個人的に思った事を書きたいと思います。
まず今回ハードコート対応は出来ていませんでした。
それなりに準備はしたつもりでしたが、ハードコートにスリクソンの組み合わせ、しかも暑さでかなりボールも飛ぶ状況でした。
糸永選手は体格的には小さい方なので、普段は色んなボールを使ってポイントを取っていくタイプです。
しかし今回は「打たないとふかす」感じで、いつもよりかなりハードヒットを繰り返す試合になってしまいました。
ハードヒットかカウンターがメインの試合運びで、相手との実力差がはっきり出た試合となりました。
九州の砂入り人工芝での全中予選の次の日に大阪入りは、対応するには準備期間は少なかったかもしれませんが、やはりこの状況ではいくつか必要な武器が足りていなかったと思います。
フットワークは、常々「砂入り人工芝仕様」にならないように、気をつけて指導して来たつもりでした。
それなりに対応は出来ていましたが、足りなかった部分は多々見受けられました。
もう一つは…
口で言うのは難しいですが、
「一旦自分のものにしてから打つ」とか、「しっかり潰して打つ」とか、「ガットで吸収してから打つ」とか言われる類の物が出来ていませんでした。
普段の練習では出来ている方ですが、足りなかったと言うのが実際の印象です。
その為力でボールを潰してのコントロールしか出来なくなったのが、一番印象的でした。
変化のある試合が出来ず、走りっこになるとモロに実力差が出ます。
そうした感じは他の九州勢にも見られました。
クロスに跳ねるボールに対して押さえられない。砂入り人工芝の高さならカウンターが打てるけど、ここではふかしてしまう。
そうした物が思っていたより対応出来ていなかった印象でした。
その為には先ずは身体の中がしっかり動く選手やないと、そのタッチは出ないのではないか?と考えています。
会場で様々な選手を見て、コーチとお話させていただきました。
僕としては技術面の指導の方向は間違っていないと思います。
ただ運動量が少ないのが気をなりました。
普段から気になっているのですが、スポーツ選手の子供達なのに、動く事に快感を覚えない感じがします。
12歳14歳なのに、一時もジッとしていない、とかちょっと凶暴な感じとか、そんな感じの選手が少なかったような気がしました。
もっともっと野生的と言うか、ワイルドな感性の選手が欲しいと思います。
特にこの年代はとっ散らかっていても良いので、身体を使い切ってテニスをする感じの選手がいても良い。
でも皆んなスマートにテニスをし過ぎなんやないか?と思いました。
あとはテニスが好きかどうか?も重要だなと思いました。
こんな炎天下にこんなレベルの試合で勝とうと思えば、もっとやらなければいけない事があります。
それこそ私生活から。
日常の生活の上に競技生活はあります。
それを考えれば、「テニスが一番好き」では足りないんやないか?と。
一番と言うのは、二番や三番と入れ替わります。
順番が付けられないくらいテニスが飛び抜けて好きやないと、そんなチャレンジはし続けていけないのではないか?と思いました。
順番付けられる好きなものとは違った次元の、飛び抜けているもの。
どんな競技の選手でも、例えば音楽のアーティストにしても、必ず一時期のめり込んでそれしか考えずに過ごした時期があります。
そんな時期を過ごしていない。
もしくは親や指導者にやらされている選手は、どこかでブレーキがかかってしまうのではないか?と思いました。
だいたい負けず嫌いなんてコーチが教える事ではないと思います。
負けて凹んだり逃げたり、笑ってごまかしたり、スカした顔して平気なふりしたりしても、それが次への成長につながる事は難しいのではないでしょうか?
厳しいのかもしれませんが、このレベルで勝ち続けるのは厳しい世界です。
勿論ITFの世界にチャレンジするのなら、更なるハードル(体格や言語)が待っています。
その為の準備や指導を、指導者が意識しておかないといけないと思います。
全日本に出れるようになってから、全日本で勝つ準備をしても遅いので。
その為には本当に指導者が、勉強や体験を継続しないといけません。
選手だけではなく、指導者もチャレンジし続けていかないと、と思いました。
習熟度による自信について
先日ダニング=クルーガー効果というものを知りました。
Wikiによると
ダニング=クルーガー効果(ダニング=クルーガーこうか、英: Dunning–Kruger effect)とは、能力の低い人物が自らの容姿や発言・行動などについて、実際よりも高い評価を行ってしまう優越の錯覚(英語版)を生み出す認知バイアス。この現象は、人間が自分自身の不適格性を認識すること(メタ認知)ができないことによって生じる。
とあります。
また
「優越の錯覚を生み出す認知バイアスは、能力の高い人物の場合は外部(=他人)に対する過小評価に起因している。一方で、能力の低い人物の場合は内部(=自身)に対する過大評価に起因している。」
ともあります。
これだけ見るとかなり難しいのですが、凄く分かりやすく説明しているものがありました。
要は専門的な習熟度によって、自信の度合いに違いが出ると言うか効果です。
また習熟度の違いが、同じ様に自分より自信がある相手でも資質能力の違いが分かるか?という事にも通じると言う事ですね。
これは選手や指導者などは凄く気をつけないといけないところではないでしょうか?
個人的にも、小浦塾での学びなどを通じて、
昔の常識が今の非常識
という経験をたくさんしてきました。
まさに目から鱗と言う感じです。
もしかしたら昔の常識じたいが元から非常識だったのかもしれません。
人間の能力なんてそんなに変わるものではないでしょうし、器具の発達による変化があったとしてもそれは流行り廃りの範囲なんだろうな、と思います。
小浦先生が絶対基本と言われるのは、そうした流行り廃りに関係ないテニスの基本なんだと思います。
成長した選手ではなく、今から選手になろうとしている子供達に何を優先して伝えるべきか?はまだまだ勉強が必要だな、と思います。
自分がAにならずにBでいつもいられる事を自戒したいと思います。